企業がメーラーでメルマガ配信はNG?メール配信システムが必要な理由
自社でメール配信を行う時、専用のメール配信システムを使っていますか?
メール配信システムを導入することで、一般的なメーラーでは配信が難しい「ユーザーごとのメールの出し分け」や「サイト上での行動や期間に合わせたメール」など、一斉配信以外の施策も実施できます。
それだけでなくセキュリティ上のリスクを防止する機能なども利用できるため、メール配信を定期的に行っているのであれば得られるメリットが大きいと言えるでしょう。
今回は、企業がメール配信システムを使わないことによって生じるデメリットを軸に、利用すべき理由や選定基準について解説します。
メール配信システムを使わないデメリットとは?
Microsoft OutlookやGmailのようなメーラーや、ECサイトのカートシステムに付帯するメール機能を使ってメール配信を行っている担当者もいるのではないでしょうか。
これまで、定期的にメール配信をしているもののメールマーケティングに注力してこなかったという企業であれば、専用のメール配信システムを導入していない場合もあるはずです。
実は、専用のメール配信システムを導入せず、一般的なメーラーを使い続けていると、セキュリティ上のリスクや施策上のデメリットが生じる場合があります。
情報漏洩を対策できる機能がほぼ搭載されていない
一般的なメーラーで一斉配信を行う際、専用のメール配信システムを利用するのと比べ、ミスを防ぐ機能がほぼ無いためセキュリティ上のリスクが大きくなります。
例えば、BCCではなく、誤ってToやCCで宛先を指定してしまった場合、個人情報の流出に繋がります。もし、専用のメール配信システムを使わず、メーラーで宛先をBCCで配信しているのであればすぐに止めましょう。
また、担当者であれば誰でも配信できる権限しか無い場合、下書きのテストメール配信と誤って本送信をしてしまうといったトラブルも考えられます。
こういったミスの多くは、人的なミスによるものです。配信担当者が気付けば防げるミスではあります。しかし、こういった事故は過去にも発生しています。
2016年4月には、東京都港湾局の事務担当者がメルマガを配信する際、誤って個人情報を流出させてしまう事故が起こりました。
その原因として、担当者がBCCと宛先を誤ってメールアドレスを入力してしまったことが挙げられています。組織の規模によらず、こういった事故が度々報道されていることを目にした方もいるのではないでしょうか。
担当者自身がどんなに気をつけていても100%防げるとは言い切れないでしょう。ミスを防ぐためにも、専用の配信システムは有効なのです。
参考:
えっ?まだBCCで一斉配信?BCCを使っちゃいけない5つの理由 | メルラボ
個人情報(メールアドレス)の流出について|東京都
配信結果の効果測定ができない
配信したメールがユーザーに届いているのか、読まれているのか、リンクはクリックされているのかなど、施策の成果を確認し、改善を行うためには効果測定が必須です。しかし、一般のメーラーやカートシステム・CMSのメール配信機能には、そもそも効果測定機能が付いていない場合があります。
メール本文に記載したリンクのクリック率は、アクセス解析ツールで分析することも可能ですが、メールの到達率や開封率を測定するには、それらの分析に対応したメール配信システムの導入が必須です。
詳しくは下記の「メルマガの効果測定」という記事にて解説していますが、メールマーケティング施策を継続して行い、登録や購買、サイト流入など何らかの成果を目的としているのであれば、効果測定や分析機能が充実した専用の配信システムを検討しましょう。
参考:正しい評価できてますか?メルマガの効果測定 | メールマーケティング アカデミー
マーケティングに活かしきれない
カートシステムやCMSのメール機能や、一般的なメーラーでは実施できるメールマーケティング施策が限られてしまいます。例えば、メール機能によっては1回に配信できるリスト数や、1日あたりの配信数に上限が設けられていることもあります。
会員数が少なく、メール配信自体あまり行っていない場合なら問題ないかもしれません。しかし、会員数を増やし「ゆくゆくは会員の属性ごとにメールを配信したい」といった計画があれば、「セグメントメール」や「One To Oneメール」に対応したメール配信システムを導入する必要があります。
配信のタイムラグや到達率が低下する可能性も
メルマガやプレスリリースなどリストに全配信するメールの場合にも、専用のシステムを使わないことによって、配信のタイムラグや到達率の低下が発生する場合があります。多くのインターネットサービスプロバイダ(ISP)では、大量のメールアドレスへの配信を禁止している事業者もあり、回線へ負荷が掛かるため配信まで時間を要するからです。
引用:https://mail.google.com/mail/
例えば、Gmailの場合、「お知らせ」や「お問合せの回答」のような定型文を用いて配信頻度の多いメールを送信し続けることで、上記のように自動的に迷惑メールに振り分けられてしまうことがあります。
このように、セール情報や解禁直後のリリース情報など、即時性が重視される配信を行う場合、ユーザーにメールが届かなかったり、配信タイミングがズレてしまうのは致命的なデメリットとなります。
参考:【初心者向け】メールを一斉送信したい!その方法と使い方 | メルラボ
企業がメール配信システムを導入するメリット
メーラーを使い続けることで様々なデメリットが生じることがわかっていただけたでしょうか。そして、現在メールマーケティングに注力していない企業であったとしても、下記の4つの理由からメール配信システムを導入するメリットがあると言えます。
- 誤送信など人的ミスの解消
- メール作成・配信の業務効率化
- メールマーケティング施策の実現
- 配信効率の向上(遅延や到達率の改善)
先述のデメリットを解消できるのがメール配信システムです。もちろん、導入にあたりコストは発生しますが、特にセキュリティリスクの対策という観点からも、利用するメリットは大きいと言えます。
配信できるリストの上限件数や配信頻度、連携できるシステムなどメール配信システムごとに特徴がことなります。次の選定基準のポイントを参考に導入を検討してみましょう。
メール配信システム選定のポイント
セキュリティ対策は万全か
メール配信システムを選ぶ際、導入や利用の容易さや機能の拡張性につい意識を向けてしまいがちですが、忘れてはならないのがセキュリティ対策は万全に行われているかどうかです。
押さえておくべき点として、下記が挙げられます。
- メールの暗号化(SSL/TLS)への対応
- 権限別のアカウント付与
- メールアドレスなりすまし対策(SPF、DKIM設定への対応)
- データバックアップ
SPF、DKIMの設定に対応しているかどうかも重要なポイントです。SPFとはメールの送信元ドメインを偽っていないかを検査する仕組みです。DKIMは送信元のドメインを認証する仕組みです。
これらの確認方法は、利用しているシステムやメーラーによって詳細はことなりますがメールの送信元詳細画面から、「送信元のドメイン」「署名元ドメイン」の欄から確認できます。
なりすましメールを防ぐという意味合いもありますが、送信先のISPに自動的に迷惑メールとして受信ブロック判定をされないための対策としても有効なので、メール配信システムの選定時に確認してみましょう。
参考:
メルマガ配信、暗号化してますか?STARTTLS(SSL/TLS暗号化) | メルラボ
なりすましを撲滅する?「DMARC」の概要をざっくり理解しよう | メルラボ
技術解説 : 迷惑メール対策委員会
メール配信業務の効率化に繋がるか
メール配信システムを選定する際、確認しておくべきなのが、システムの導入によって業務環境の改善につながるかどうかです。せっかく導入しても、操作が難しかったりして作業にかえって時間がかかってしまっては意味がありません。例えば、下記のような機能が搭載されているか確認してみてください。
- リスト管理機能
- 配信スケジュール設定機能
- メールエディタ機能
- 氏名などの差し込み機能
メーラーを使ってメールを配信している企業であれば、上記の機能が標準で搭載されていないこともあり、手動で配信設定やメールの装飾を行ったり、宛先ごとに氏名の差し込みを行わなければなりません。また、配信リスト管理や統合、エラーの送信先のクリーニングが簡単にできるメール配信システムを選ぶことで改善に繋がるでしょう。
自社のシステムに合った拡張性を備えているか
メール配信システムを選定する際、機能のカスタマイズ性を基準に選ぶのも手段です。その際、必ず自社が導入しているその他ツールとの連携ができるのか、社内のデータベースとの連携ができるのか、導入後の運用を見越して選定することが大切です。
例えば、現状は新たな施策の計画が無かったとしても、マーケティング戦略の設計や現状の効果測定の結果によって、新たな打ち手としてステップメール等を配信ができると考えれば、より効果的なマーケティング施策を実現できると思いませんか?
また、メーラーやメール機能では1度に配信できる件数が限られている場合もあります。自社が保有するリストがその上限を超えていた場合、リストを分割して配信しなければなりません。メール配信システムの場合、自社が保有するリスト件数に応じて登録件数を増やしていけるシステムもあるため、自社の配信リストに応じてシステムを検討することが大切です。
そして、施策の内容にもよりますが、配信する会員ごとのスコアリングや、メール以外のチャネルを跨ぐように配信シナリオを設計するなど、複雑な施策をこれから検討しているのであれば、メール配信システムよりもMAツールを導入するほうが効率的な場合もあります。
そういった意味でも、自社がどういったマーケティング戦略を持ってメール配信を行っているのかを踏まえつつ、目的を基準に選定してみてください。
まとめ
もし、「メールを送るだけなら、メーラーで十分」と感じているのであれば、改めて自社のメール配信環境を振り返ってみてください。
何気ない業務の中に、配信時のセキュリティ的なリスクや工数のかかり過ぎるフロー、実は取りこぼしている成果などがあるかもしれません。
すぐに何らかのメールマーケティング施策を実施する計画が無くとも、メール配信業務を自社のビジネスとして取り組むのであれば、今一度上記で上げた選定基準をもとにメール配信システムを検討してみてはいかがでしょうか。