メールマーケティングに付随して必要になるスキルやツール
メールマーケティングは、従来の一方的にユーザーに送るだけの一斉メール配信とは異なり、顧客のニーズに合わせて改善を繰り返すため、様々な知識やスキルが必要です。
また、近年のメール配信ツールは、単なるメール配信機能だけではありません。例えば、見込み顧客を見つけ出すことに役立つ機能やメール本文の改善に役立つ機能など、メールマーケティングを支援する機能が備わったツールが出てきています。
本記事では、メールマーケティングをこれから始めるにあたり、どういったスキルが求められるのかを解説します。そして、それらの活動を支援するメール配信ツールにはどんなものがあるのかも併せてご紹介していきます。
メールマーケティングの実践に求められるスキルとは?
顧客ニーズに合ったメール内容を企画、配信、計測し、さらなる効果向上のため、改善を加えていくメールマーケティングの活動には、以下のようなスキルが必要とされています。
<メールマーケティングに必要なスキル>
- マーケティングの知識と思考
- 企画立案能力
- データ分析能力
以降にて、それぞれの理由と詳細を見ていきます。
マーケティングの知識と思考
メールマーケティングとは、メールを通じて顧客とコミュニケーションを図るマーケティング活動の事です。その名の通り、マーケティング活動の一手法でありますので、前提としてマーケティングの知識や思考が必要となります。
ここでいうマーケティングの知識とは、商品やサービスを販売するにあたっての、「商品・サービス知識」、「顧客像の理解」、「競争相手の把握」がそれにあたります。
自社の提供する商品・サービス知識がなければ、そもそも顧客にアピールもできませんし、顧客像の理解がなければ、誰のニーズを満たす商品・サービスなのかが不鮮明な効果の薄いアピールしかできません。さらに、競争相手の把握もできていないと、自社の強みや差別化ポイントを顧客に伝えられません。
また、これらの背景知識を活用して、顧客が求めているものは何か?商品・サービスの提供により、どのような状態を作り出せば顧客が購入しやすいか?どうすればより多くのターゲット顧客に知ってもらえるか?を深く思考することが必要となります。
こういった知識と思考を基に、メールを活用して販売促進に結びつける事がメールマーケティングなのです。
企画立案の能力
続いて「企画立案能力」です。メールマーケティングを実践するにあたり、何を目的として、誰に対して、どんな内容の情報提供をどんなスケジュールで行っていくのか。そして、何をもって施策の成功・失敗を判断するか……といった施策全体の企画立案が非常に重要となります。
例えば、ECショップでの婦人服セール開催による売上向上を目的としたメルマガ配信を行う場合、以下のような施策概要を設計していきます。
<施策概要の例>
〇目的 → メール経由の売上向上
〇ターゲット → 対象の婦人服を購入する20代~30代女性
(ECショップの過去利用者およびメルマガ登録者から抽出)
〇PR内容 → 婦人服セールの開催
〇配信期間と頻度 → セール期間をまたぐ〇月〇日~△月△日まで、週1回の配信
〇評価軸 → 開封率〇%以上、クリック率〇%以上、メール経由の売上額〇円以上など
ただ、配信するだけでは、その後の振り返りと改善もできません。マーケティング施策は1回で上手くいくことは殆ど無いと言っても過言ではないため、改善していく事を前提に、どう施策を評価するかの評価軸の設定も非常に重要となります。
データ分析能力
データ分析能力もメールマーケティングには必要なスキルです。
データ分析はまず、施策の成功・失敗を判断するためのKGI(Key Goal Indicator)と、その達成度合いを判断するためのKPI(Key Performance Indicator)を計測することから始まります。施策の目的によって重要度が変化はしますが、メールマーケティングにて良く利用されるKGIとKPIとしては以下が代表的です。
<メールマーケティングで使われるKGIとKPI>
- メール配信数(KPI)
- メール到達率(KPI)
- メール開封率(KPI)
- メール本文内URLのクリック率(KPI/KGI)
(WEBサイトへの誘導が目的の場合はこちらが最重要値) - メール経由のWEBサイトコンバージョン率または数・購入金額(KGI)
(誘導先サイトでのアクションが目的と設定されている場合)
そして、これらのKGIとKPIを計測した後、蓄積されたデータから正しい認識ができることがデータ分析能力となります。
例えば、
〇【課題】開封率(開封数/配信数)が低い
- 到達数も少ない → リストもしくは配信方法の問題
- 到達数は正常値だが開封数だけが少ない → メールタイトルや配信時間に問題あり
〇【課題】コンバージョン率が低い(数が少ない)
- 開封数も少ない → メールタイトルや配信時間に問題あり
- 開封数は悪くはないがクリック数が少ない → 本文内容やリンク配置に問題あり
このように、計測されたデータから情報を読み取り、改善行動のための原因の特定を行うことこそが、データ分析能力です。
以上の3つが、メールマーケティングの実践には欠かせないスキルです。
こうしてみると、メールマーケティングの実践に求められるスキルもハードルも高いと言えます。ただ、「知識が無いから始められない」と嘆いて諦めるのは早計です。
メールマーケティングは、言わば、顧客ニーズをくみ取りメール配信の効果をより高めていくための手法です。それ故、あくまでメール配信の延長線上にあります。まずは、メール配信を始める事を優先し、運用しながら出来る範囲で効果を計測しつつ、改善を進めていくと良いでしょう。
また、最近ではメールマーケティングを支援するツールも多く出てきています。これらのツールを利用する事で、知識が少ない状態からでも始める事ができます。
つづいては、メールマーケティングを支援するツールについて紹介していきます。
メールマーケティングを支援するツールとは?
ツールは主に、「メール作成」「メール配信」「効果測定」3点の効率化を支援してくれます。
データの集積や配信エンジン、メール作成を効率的にする機能など、メールマーケティングにはツールの利用が欠かせません。また、これらの支援機能を持つツールは複数種類あります。以下にそれらの種類をあげています。
<メールマーケティングの支援ツール>
- マーケティングオートメーション(以下、MA)ツール
- CRMシステム
- メール配信システム
マーケティング活動全般を自動・効率化するために生まれたMAツール、顧客管理を自動・効率化するために生まれたCRMシステム、メール配信を自動・効率化するために生まれたメール配信システムの3種類があります。それぞれのツールの種類の特徴を紹介していきます。
MAツールの特徴
MAツールは、リード獲得から営業にリードを受け渡すまでのマーケティングプロセスを自動・効率化することができるツールです。具体的には、Webサイトに設置するフォームやポップアップ、ランディングページの作成などのリード獲得の仕組みがあります。そして、獲得したリードの中から営業へ引き渡せるホットリード抽出し、メール配信施策ができるため、1つのツールで完結できます。MAツールにとって、メールマーケティングは機能の一部となります。
MAツール導入では、リード獲得からホットリード抽出の工程をワンストップで管理できる事が最大のメリットです。機能をフルに活用すれば、多岐にわたるマーケティングにかかる作業工数を大幅に下げる事ができます。
その一方で、多機能ゆえに複雑化しており、設定箇所が多く、操作に手間取ったり、操作の習得に時間がかかるなどのデメリットもあります。そもそも、MAツール導入以前で実践していなかったマーケティング活動をMAツールの導入と同時に効率的に始めるといった事は、考え方としては間違いです。
MAツールはあくまでもマーケティング活動の自動効率化ツールであり、今までできていた活動の手間を削減する事が目的だからです。運用の根幹となるマーケティングシナリオの設計などを疎かにしたまま、勇み足で導入をし、結果的にメール配信機能しか利用できていない。といった話はよく聞かれる話です。
CRMシステムの特徴
CRMシステムとは、顧客の各情報をデータベースで一元管理し、顧客折衝を行う営業やサポート部門の活動を自動効率化するためのツールです。企業情報からそこに属する担当者の属性情報まで幅広く管理ができます。
MAツールとは大きく異なる部分は、リード獲得機能は無いことです。Webサイトから直接リード情報を送信したり、CSVファイルでインポートをしたり、MAツールと連携するなどをして顧客情報を格納します。顧客情報を格納後、営業やサポート活動で得られた属性情報を顧客データベースへ都度追記していく形をとります。
リアルタイムに蓄積された顧客情報を利用して、営業の掘り起こしやアウトバウンド活動、サポートの対応速度向上やアップセル活動に活用することができます。
CRMシステムによっては、システム内から顧客への連絡を行うため、電話発信、メール送信、SNS送信が行えるものもあります。特に、企業・顧客の属性情報を細かくリアルタイムに管理ができるため、これらの正確な情報を利用したステップメールやセグメントメールなどの「One to Oneメールマーケティング」ができることが最大のメリットです。
やはりその反面、MAツールと同じく多機能ゆえに複雑な操作が必要だったり、製品・サービスによっては、顧客管理に重きを置いているため、最低限のメール配信機能のみとなり、メールマーケティングに必要な機能が不足しているものもあります。その場合には、後段で説明するメール配信システムと連携して活用するのが良いでしょう。
メール配信システムの特徴
メール配信システムは、その名の通りメール配信に特化したツールです。保有する配信リストに対して、一斉配信のメルマガを配信したり、ステップメールやセグメントメール配信、開封率・URLクリック率の計測など、メールマーケティング施策に総合的に対応できるのが特徴です。
基本機能があくまでもメール配信であるが故に、システム構造が非常にシンプルで無駄が少なく、操作が非常に簡単で導入ハードルが低いことが最大のメリットです。価格体系も、保有リストの上限数や月間の配信数での課金プランになっている場合が殆どです。配信規模が小さい段階でも使った分だけ支払うシステムのツールが多く、低予算でスタートできることもメリットとなります。
反面、シンプル故にリード獲得や、ホットリードの自動抽出(データ分析から見つける事はできますが、自動的にはできません。)といった機能は付いていないため、機能が不足している点は、MAツールやCRMシステムと連携を行うのが一般的です。
まとめ:メールマーケティングの実践を通じて学びつづけよう
メールマーケティングを実践するために、必要なスキルの習得はお世辞にも簡単とは言えません。しかしながら、便利なツールの登場で、入門者でもツールを使いながら、本記事の前半で説明したメールマーケティングに必要なスキルを獲得していくことができるようになりました。
ただ、最終的に良い結果を出すためには、スキルや経験といったものが必要になってくるので、メールマーケティングの実践を通じ、常に学ぶ姿勢を忘れないのも大切でしょう。