脱・定型文!読者を満足させるメールコンテンツ制作の基本
メルマガ配信(一斉配信)の最大のメリットは、少ない手間で多くの顧客にアプローチできることです。その一方で、どうしても個別配信メールよりは反応が落ちてしまいます。
ほとんど定型文を使用して多くの人に届けるメルマガは、個別配信メールと異なり自分事にしづらく、どうしても読み手の心に響きにくくなってしまうからです。
そこで今回は「脱・定型文」を目標として、どうすれば読者を満足させることが出来るメールを作れるようになるのか解説していきます。
顧客の状況によってリストを分ける
メール配信先のリストに含まれている顧客は、皆「同じような状況の顧客」でしょうか。
当然ながら、製品の購入について具体的な時期は決まっていない「これから客」と、導入時期が目前に迫っている「今すぐ客」では、検討の本気度が異なります。
状況が異なるこれらの顧客を1つの配信リストにまとめて、同じ内容のメールを送ることはやめるべきです。
例えば、情報収集段階の「これから客」に、来週から始まる初期費用無料キャンペーンの案内をしたとしても、自社に必要な機能の選定や他社との機能比較など、検討のステップを何段も飛ばしていきなりサービスに申し込む可能性は低いでしょう。
「これから客」に対しては製品の新機能や導入事例を伝えるような今後の検討意欲を上げることを目的としたメールを出し、「今すぐ客」にはキャンペーンを案内のような早期の申込みを目的としたメールを出すなど、状況に応じてメールの内容を出し分けることが必要です。
当然、配信リストは顧客の状況によって細かく分ければ分けるほど、相手の状況に寄り添ったメールを作成することが出来ます。一方で、細かくし過ぎるとそれだけメール作成に手間がかかり、一斉配信の最大のメリットである「手間の削減」を失ってしまうことになります。メール作成に掛けられる稼働可能な工数とのバランスを考えることも重要です。
メールマーケティング施策を1人で運用している場合は、リストの分類は2種類程度にしておくのが現実的でしょう。
個別データは件名にも差し込む
メール配信システムの機能には「データ差し込み」機能というものがあります。
メール本文の冒頭に「株式会社○○ △△様」といったように相手の社名と名前を差し込むという使い方については、既にに実施している企業も多いでしょう。
この機能なのですが、件名(タイトル)にも使えることはご存知ですか?
例えば、データ差し込み機能を利用することで、以下のような件名を作ることが出来ます。
- ○○様、その後の検討状況はいかがでしょうか?
- ○○ポイントが来月で失効となります【お知らせ】
- スタッフの○○です。ご購入いただいた○○には満足いただけていますか?
※○○が差し込み部分
ポイントはあえて【】などで差し込み部分を強調しないことです。
個別のメールを書くときに強調しない部分は、一斉配信であっても強調する理由はありません
個別メールで使わない表現は一斉配信でもやらない
文章内の強調もそうですが、個別配信では行わないことを一斉配信だと行っているという事例をたまに見かけます。
例えば、「こんにちは。○○_様」と言ったように、名前と敬称の間に半角スペースを入れたり、個別配信では使わないような文章の言い回しを使ったりというようなことです。
ひと目で一斉配信メールと思われるような書き方をあえて行うのは避けるようにしましょう。
長文のメルマガは避ける
色や大きさなどを変えることの出来ないテキストメールは、どうしても読みづらくなってしまいます。
そのため、テキストメルマガ全盛期には罫線や記号などで装飾することで本文を見やすくするというテクニックが流行しました。もちろん、今でもメールを読みやすくするという意味ではこのテクニックは有効です。
ただし、当時と今で状況が違うのは、読者は長文のメルマガを読まないということです。
ひと昔前は企業からの情報発信手段はメルマガがメインであったことに対し、今ではFacebookやTwitter、LINEのようなSNSというチャネルも加わっています。
実際に総務省による通信利用動向調査によると、企業がSNSを情報発信に活用する割合は平成26年が15.8%だったのに対し、わずか4年後の平成30年の調査では28.9%にまで上昇しています。
企業によるプロモーションチャネルは多様化していますが、受け取り手側が情報に触れる総時間はそれほど伸びていません。つまり、チャネルが増加した分、1つのチャネルにかけられる時間は短くなっていると言えます。
そのため、昔のような長文のメルマガはじっくりと読まれる割合は減少しており、読者にも求められていないとみるべきです。文章は短く、要件を簡潔に伝えるようにしましょう。
長文でも読まれるメルマガ
一般的には、長文のメルマガは好まれない傾向にありますが、長文であっても読者に支持されているメルマガがあります。
それは、ショップや人の「ストーリー」を語るメルマガです。
例えば、オリジナルのアクセサリーを販売している、あるお店のメルマガでは、創業者が自身の波乱万丈な人生を面白おかしく書いており、非常に長文のメールにも関わらず、楽しみにしているファンも多く、口コミにより購読者数は増える一方だと言います。
また、長い歴史を持つある酒蔵が出しているメルマガも、造っているお酒の歴史や、日本酒のウンチクがふんだんに盛り込まれた長文のメールなのですが、こちらも根強いファンがおり、ファンからメルマガの感想が送られてくることもあるそうです。
このような種類のメルマガは直接的なセールスが目的なのではなく、ファンへの会報のようなものです。メルマガを通して、顧客のロイヤリティを醸成し、ファン化していくことが目的なのです。
顧客のファン化は短期では実現できませんが、他社とは違うストーリーを出せるのであれば、こういったやり方も選択肢の一つとなるでしょう。
HTMLメールは一貫性に注意
いまやBtoC系企業のメルマガはHTMLメールが主流です。
写真は言葉にすると60,000語の価値があると言われています。例えば、女性向けのワンピースの新作をメルマガで案内するときに、特徴を文字情報だけで正しく伝えるのは非常に困難ですが、写真であれば一瞬で相手に伝えることが出来ます。
ただし、メルマガ自体では目的を完結させることはできないため、メルマガが担う役割としては、魅力的なコンテンツによって読者の意欲を高め、目的を達成出来る場所へ誘導することです。
この時にいかにメルマガで魅力的なコンテンツを作ったとしても、一貫性が失われると、読者は誘導先で目的を達成しないので注意が必要です。
例えば、新作のワンピースの発売をメルマガで知った読者が、「欲しい」と思ってリンク先をクリックしたら遷移先はネットショップのトップページだったなんてことは良くあります。
それでも購入意欲が高ければ、そこから自身の力でお目当てのページを探し当てるでしょうが、本来読者が期待していたのはリンクした遷移先で即購入が出来るというスムーズな体験です。
HTMLメールは誘導先の入り口であり、誘導先との一貫性を保つことが大事です。
参考:Visual Marketing: A Picture's Worth 60,000 Words
ステップメールを使ってアフターフォロー
特定の日を起点として、設定した間隔でメールを自動配信することが出来るステップメールをうまく利用することで、顧客の満足度を上げることが出来ます。
それは、ステップメールの代表的な使い方の1つである「顧客フォロー」です。
例えば、商品が購入された日を起点に設定し、翌日にお礼のメール、7日後に商品を使っていて困りごとが無いかヒアリングのメールを自動で配信するようなシナリオを組みます。
購入者のアフターフォローを毎回手動で行うのは大変な手間ですが、ステップメールならば設定をしてしまえばあとは自動でメールが配信されるので、大変だったアフターフォローを自動化することが出来、顧客満足度を上げられます。
また他には、在庫が切れる頃合いを見計らって、再購入を促すシナリオを設定することでリピーターを獲得するという使い方も出来ます。
まとめ:メール配信は今もなお効果的
メルマガの時代は終わったと言われていますが、昨今流行の兆しを見せているマーケティングオートメーション(MA)ツールのメインの機能はメール配信です。
旧来のメルマガとMAツールのメールの異なるところは、リストの全員に同じ内容の定型文を配信するのではなく、顧客の状況によってパーソナライズしたメールを自動で送ることが出来るという点です。
このことから分かるように、メルマガ自体の有効性が失われたのではなく、より顧客の状況や感情に寄り添ったメール配信はいまだ効果的なのです。
設定の複雑さと価格の高さからMAツールはそう簡単に導入できないと思いますが、今回紹介したテクニックならば、いま利用しているメール配信システムの機能だけで実現できます。